駅員が終日いない「無人駅」が各地に増える中、観光スポットや地域の拠点として、鉄道会社や住民が活用を進めている。雄大な景色や駅直結のキャンプ場など、無人駅の魅力はさまざまだ。ただ、駅の無人化には安全性や障害者の移動の制限といった課題も多い。
目の前に瀬戸内海、ゆったり時間
小さな駅のホームの目の前には、見渡す限りの瀬戸内海が広がる。ベンチに座って海を眺めていると、時間がゆっくりと流れるような感覚になる。
JR四国の予讃(よさん)線・下灘(しもなだ)駅(愛媛県伊予市)は、単線の無人駅。ある晴れた日の夕暮れ時、カップルや家族連れなど50人ほどが海を見つめていた。お目当ては、空と海が青や茜(あかね)色のグラデーションに染まる「マジックアワー」だ。
2人組の女子大学生は「海が近く、こんなにきれいに夕日が見えるなんて」と、まぶしそうに眺めていた。県庁所在地の松山市から列車で約1時間かかり、駅には1時間に1本ほどしか止まらない。それでも「最高に映える景色。来てよかった」と、カメラのシャッターを切っていた。
JR四国によると、下灘駅は1935年にできた。住民の足だけでなく、ミカンを運ぶ拠点としてにぎわった時期もあった。だが車の普及などで利用が減り、86年に無人駅となった。
転機は10年ほど後に訪れた…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル